新聞記事のなかで「組織力」と対立する概念は「身体能力」だ。新聞はそれを「アフリカ特有」のものだと,しつこいほどに書く。山本のいうように「高い身体能力」という言葉が「文明化されていない身体」という意味をもっているとすれば,ここにあるのは「身体=アフリカ=未開」と「精神=ヨーロッパ=文明」という二分法的な思考回路だ。
この境界線を前にして,新聞は無意識のうちに,日本人を「精神=ヨーロッパ=文明」の側に置きたがっているのではないか。
そのとき顔をのぞかせるのが,日本人論でも喧伝されてきた「日本人は持ち前の組織力でここまで国を発展させてきた」という国民の物語だ。歴史や記憶に裏打ちされているかのようにみえるこの言い方が,サッカー代表チームのプレースタイルの描写にまで影響を及ぼしている可能性がある。
森田浩之 (2007). スポーツニュースは恐い:刷り込まれる<日本人> 日本放送出版協会 pp.170
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