「波に乗る」という現象が信じられていることの第2の説明は,ハッキリとした先入観を持っていないような場合でさえ,ある種の基本的プロセスによって,データが間違って解釈される可能性があるとするものである。人は,偶然によるできごとがどのようなものであるかについて,間違った直観をもっていることが心理学者によって明らかにされている。たとえば,投げ上げたコインの裏表の出方は,一般に考えられているよりも裏や表が連続しやすい。そこで,裏表が交互に出やすいものだという直観に比べて,真にランダムな系列は,連続が起こりすぎているように見えることになる。コインの表が4回も5回も6回も連続して出ると,コインの裏表がランダムに出ていないように感じてしまう。しかし,コインを20回投げたとき,表が4回連続して出る確率は50%であり,5回連続することも25%の確率で起こりうる。表が6回連続する確率も10%はある。平均的なバスケットボールの選手は,ほぼ50%のショット成功率なので,1試合の間に20本のショットを試みるとすれば(実際,多くの選手はこれくらいショットを試みる),あたかも「波に乗った」かのように,4本連続や,5本連続,あるいは6本連続でショットを決めるようなことは偶然でも十分起こりうることなのである。
T.ギロビッチ 守 一雄・守 秀子(訳) (1993). 人間この信じやすきもの—迷信・誤信はどうして生まれるか— 新曜社 pp.23-24
(Gilovich, T. (1991). How we know what isn’t so: The fallibility of human reason in everyday life. New York: Free Press.)
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