回帰の概念を本当に理解できていないときに人々が直面する2つの問題点のうちのもうひとつは,「回帰の誤謬」として知られている。回帰の誤謬というのは,単なる統計学的な回帰現象にすぎないものに対して,複雑な因果関係を想定したりして余計な「説明」をしてしまうことを言う。素晴らしい成績の後,成績が落ち込むと怠けたせいであるとされたり,反対に,凶悪犯罪が頻発した後で犯罪件数の減少が見られると,新しい法律の施行が効を奏したためと考えられたりすることである。回帰の誤謬は,偏りの錯誤と似たところがある。どちらも,偶然に生じたできごとに人々が余計な意味づけをしてしまう現象だからである。統計学的な回帰の結果生じたにすぎない現象に,無理な説明づけをしようとするあまり,間違った信念が形成されることにさえなってしまう。
T.ギロビッチ 守 一雄・守 秀子(訳) (1993). 人間この信じやすきもの—迷信・誤信はどうして生まれるか— 新曜社 pp.41-42
(Gilovich, T. (1991). How we know what isn’t so: The fallibility of human reason in everyday life. New York: Free Press.)
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