配置転換,懲戒といった権限は会社の権限というが,よく考えてみてほしい。なぜ,使用者にはこのような権限があるのか。労働者と使用者というのは,労働契約の当事者としては対等である。懲戒というのは罰を与えることだ。契約の一方当事者である使用者が,対等の相手方当事者である労働者に対して,なぜ罰を与えることができるのか?
この疑問に対する労働法学の回答は「契約」である。つまり,労働者が,自分の一鼎の非違行為に対しては,異聞に×が下されても仕方がないということに同意しているからできる,という理屈である。
これによれば,使用者に懲戒権があるのは,労働者が同意を与えることによるのだ。ということは,労働者の集合体である労働組合が,懲戒に同意権があるとすることは,それほどおかしな話ではないし,使用者にもともと存在する権限を奪うものではない。
配置転換についてもまったく同じことがいえる。
このように,使用者に人事権があるのは,労働者の同意があるからなのだ。組合が口を挟むべきことではない,では説明になっていないのだ。
笹山尚人 (2008). 人が壊れてゆく職場:自分を守るために何が必要か 光文社 pp.186
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