あと知恵によるバイアスは,こんなふうに生じる。結末がどうなったかを知ることは,過去の出来事の認識と記憶のしかたに大きな影響を及ぼす。これは,どんな些細なことにも,あてはまる。1975年のスーパーボールか,おばあちゃんの人工肛門手術か犬を去勢させるかどうかの決断かを問わない。結果を知ることによって,記憶が変わってしまうのだ。
歴史家でさえも,このミスに陥りやすい。ある出来事が起こったあとならば—それがゲティスバーグの戦いでも,パール・ハーバー(真珠湾)攻撃でも—関連のある要因と関連のない要因とを分けるのはたやすい。これらの史実について書く者は,決まって結果が不可避のものだったように描いてしまう。だが,こうした記述の説得力は,ほかを犠牲にして,ある事実を伏せることで獲得される—「忍び寄る決定論」と呼ばれる過程だ。
ジョゼフ・T・ハリナン 栗原百代(訳) (2010). しまった!:「失敗の心理」を科学する 講談社 pp.94
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