反社会的な人物もソシオパスも,後悔やその他の道徳的感情を覚える能力がない,したがって反社会的・犯罪的行為に良心の呵責を覚えない人間を指す言葉である。
社会学者は,一般にソシオパスという言葉を使い,ソシオパシーとは後天的な行動,たとえばギャングのように「反社会的なサブカルチャーによって社会化された」人間の行動だと考えている。生物学者は,反社会的な人物という言葉を使い,その行動は先天的で変えられないものだと考えている。心理学の専門家のあいだではどちらを用いるか合意ができていない。
サイコパスには正邪の区別がついている。ただ,そのように行動しないだけなのだ。傑出した神経学者であるジョルジ・モルは言っている。
「反社会的な人物のきわめて驚くべき点は,正邪を区別する能力があることだ。しかし,適切な行動とは何かという知識に中身が伴っておらず,生活の行動指針としての影響は仮にあったとしてもわずかである。反社会的な人物は,善を知ることと善を行うことが別であるという,もっともよい例だ」
バーバラ・オークレイ 酒井武志(訳) (2009). 悪の遺伝子:ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのか イースト・プレス pp.94
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