法心理学者のJ・リード・メロイが,反社会的人格を備えた子供を持つ母親のたいへん悲しい話を伝えている。この病気の初期に現れる本質的な病情である。
「『(母親によると)1歳半で何かのスイッチが切れたかのようで,ひどいかんしゃくを起こすようになり,良心のかけらもなく,他人への共感をほとんど示しませんでした。生き物を見ればとにかく殺し,ひどく不機嫌で,悪意に満ちていました』。この母親は,感情的<かつ>捕食性の息子の行動に続けて以下のように証言している。家の中でものを燃やしたり,ナイフで脅したり,鏡台の前のカーペットや枕からピンの先が突き出すようにしておいたり,着るときにひっかき傷ができるように服にピンを隠したりした……。大きくなると,サディスティックな行為はさらに目立つようになった。あるとき裏庭に猫をつるし,帰宅した母親の反応を見ていたことがあった。おびえる母親を見てよろこび,おびえるようすをまねて見せたのを,母親は覚えている」
バーバラ・オークレイ 酒井武志(訳) (2009). 悪の遺伝子:ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのか イースト・プレス pp.176-177
PR