じつのところ,貞淑さという価値観を裏づける例を自然界に求めようとすれば,きっと失望するにちがいない。地球に棲むほぼすべての動物は,たとえ仔を育てるためにつがいになるものでさえも,複数のセックスパートナーを求める。DNAを調べたところ,ペアをつくっている動物の仔の10パーセントから70パーセントが,つがいの相手以外との出会いから生まれていることがわかった。<ニューヨークタイムズ>の記事に引用されたワシントン大学の心理学者デヴィッド・P・バラシュの話によれば,自然界で唯一の「貞淑な」生き物は淡水魚に寄生する扁形動物だという。「雄と雌は人間でいえば青年期に出会います。そして,たがいの体を文字どおり融合させ,そのままで死ぬまで過ごします。彼らは私が知るかぎり唯一,完全なる単婚を実践していると思われます」とバラシュは語った。
ロバート・フェルドマン 古草秀子(訳) (2010). なぜ人は10分間に3回嘘をつくのか:嘘とだましの心理学 講談社 pp.126-127
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