よく「客観報道」という言葉があるように,マスコミとは感情を排除して,すべてを公平に見る存在だと思われるかもしれないが,そんなことはない。記者も人間である。「怪しいな」と思う相手には,自然と厳しい論調になるし,「いい人だな」と思えば好意的に扱う。神様ではないのだから,どうしても「感情」に左右されるのだ。
このケースで言えば,記者というのは基本的に「猟犬」なのだ。逃げるものは追う。牙をむいてくるものには吼える。だからこそ,すべてを曝け出して「全面降伏」されると,もはや追うものがなくなってしまう。
ひとりの客が騒ぐ。それを握りつぶした大企業という構図をマスコミは求める。これを防ぐにはどうスピンを仕掛けるか。
簡単である。
この構図を打ち消す逆の構図をつくればいい。
客の訴えに対して,ただただ平身低頭するしかない無力な企業。マスコミはとたんに興味を失う。もし,それを計算したうえで,このような対応をしたとしたら,広報担当者はなかなかの「スピンドクター」だといえる。
窪田順生 (2009). スピンドクター:“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 講談社 pp.182
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