たとえば,誰かがある企業の悪口を書き込む。根も葉もない噂話や,誹謗中傷である。しかし,それに呼応するようにして,また別の誰かが別の悪口を書き込む。その誰かのなかには,取引先やライバル社の人間がいるかもしれない。そのうち,内部の人間にしかわからないような書き込みもあらわれる。つまり,社員からの“内部告発”である。これだけでも,企業にとっては悪夢のようだが,それだけでは済まない。個人ブログや情報サイトに引用され,書き込みの情報はまたたく間に広まっていく。もはや新聞や週刊誌の部数など目ではない。テレビの視聴者だって軽く超える。そして,その悪口はサイバー世界の場合,読めば捨てられる紙媒体やテレビと違って,残るのだ。
いまや多くの人々が情報をネットで検索する。なにかの商品を購入しようと思ったら,ネットで調べる。そして,一部上場企業にとってさらに頭が痛いのが,個人投資家である。彼らの多くがネットで取引をする。投資しようと思ったら,まずネットで企業の情報を得るのは当然だろう。そこで,検索をしたら様々なネガティブな書き込みがあるとする。投資意欲に暗い影を落とすのは間違いない。
窪田順生 (2009). スピンドクター:“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 講談社 pp.191
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