人間,生きていたらさまざまな問題とぶつかります。なかにはやっかいな問題もある。そんなときに出てくるのが,こんな台詞です。
「今度ばかりは人生の危機だ。どうやって乗り越えたらいいのか……」
人生の危機とは尋常ではありません。
いったいどんな状況が人生の危機なんでしょうね。
「ついにリストラされてしまった。次の仕事のあてもないし,まさに人生の危機だよ」
「離婚問題が持ち上がっている。これまで順調にきたのに,いまになって人生の危機が,突然,訪れるなんて……」
リストラや離婚が人生の危機というわけですが,わたしには到底,そうは思えません。危機という言葉を使うとしても,それらはせいぜい生活の危機です。人生の危機とはまったく違います。
どうやら,日本人は人生の危機と生活の危機を混同してしまっているらしい。これこそ,かなりやっかいな問題です。
ひろさちや (2010). 「ずぼら」人生論 三笠書房 pp.164-165
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