ネット上で知り合い恋愛感情が芽生える。これは自然なことなのだろう。ただ,山本奈菜の話を聞いて,こんなイメージがわいた。リアルで直接会って,お互いが気に入る。すると,ゲーム画面を「ビューッ!」と移動するキャラクターのように,相手の家に入ってしまう。個人の領域や境界線のようなものがない,そんな感じがしたのだ。お互いに段階をふんで接近してゆくコミュニケーションが希薄なような,そんな感触が残った。
そして欠けていると思ったのは,動物のような警戒心だ。動物は本能のまま研ぎ澄まされた感覚で注意深く相手を見極めようとする。そうした他者への緊迫感を感じさせない。
ある千葉のハードゲーマーが語ったこんな言葉が印象的だ。
「ゲーマーは,恋愛に関して奥手なんですよ。ゲームサークルの知り合いで28歳まで女性と付き合ったことのない男性がいます。恋愛経験がないから,一度火がついちゃうと,もうどうしていいかわかんなくなっちゃう。ネットゲームは主婦が多いじゃないですか。それで,まずい恋愛をしている人も多いですね。ある種の出会い系サイトのようなものですよ」
視点を変えると,ネットゲームは出会い系なのだ。
芦崎 治 (2009). ネトゲ廃人 リーダーズノート pp.61
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