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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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長期予測研究

 予測するという証拠を示した研究成果はふえているが,ここでは2,3の例を挙げるにとどめよう。ひとつは,E・ローウェル・ケリーとジェイムズ・コンリーによる研究である。ケリーがこの研究に注いだ努力には,頭が下がるばかりだ。最初の時点でのデータ収集から論文の発表に至るまで,経過した時間はなんと52年だった。これほどの時間的奥行きをもったデータは,人生の長期的パターンに関心をもつ私たちにとって,きわめて貴重な資源である。1935年から1938年までに,ケリーは主としてアメリカのコネティカット州から婚約中の300カップルを調査対象として募集した。ケリーは彼らと接触しつづけ,その結婚の状態について——結婚生活が破綻なく続いてるか,結婚生活が幸せか——追跡調査を行った。データは,結婚直後と1954〜5年の時期,そして最後に1980年〜1年の3回にわたって集められた。1930年代には,1人1人の被験者につきそれぞれ5人の知り合いに依頼して,パーソナリティ尺度評定を行っている(このパーソナリティ尺度は,今日私たちが使っている尺度のさきがけであり,基本的に,外向性,神経質傾向,誠実性そして調和性からなる)。集められた評定の結果から,ケリーはこの4つの次元について平均的パーソナリティ・スコアを引き出した。
 結果として,このパーソナリティ・スコア——1930年代に被験者の友人たちによってなされた単純な評定——は,現実に彼らの結婚の成り行きをかなり強く予測するものだった。カップルのどちらか(男女を問わず)の神経質傾向が高ければ,離婚の確率は平均よりはるかに高かった。別れなかった場合には,その結婚生活は,40年後になされた各自別々の評定平均が示すように,あまり幸福なものではなかった。神経質傾向の高い人々が陥りやすいネガティブな情動は,現実の生活のなかで,また長い期間にわたって,確実に違いをもたらしたのである。ほかにもまた興味深いパターンがいくつかある。男性の誠実性スコアは,離婚を予測していた(誠実性のスコアが低ければ低いほど,離婚の可能性は高くなる)。ケリーとコンリーが集めた離婚理由からは,誠実性の低い男性は基本的に家長として落第だという傾向が見てとれる。ある者は大酒飲みであり,ある者は金銭的にだらしなく,またある者はその両方だったりする。ここで注意すべきなのは,彼らが戦前に結婚したカップルであり,当時は伝統的な性役割分担意識があったことである。女性の場合にこの効果が見られないのは,この時代の女性がおおむね家計の担い手としての役割を果たしていなかったことによる。


ダニエル・ネトル 竹内和世(訳) (2009). パーソナリティを科学する 白揚社 pp.40-41
(Nettle, D. (2007). Personality: What makes you the way you are. Oxford: Oxford University Press.)
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