そうなると,繁殖の面で適合するためには,単一の集団に類型の異なる個体が含まれてはならないことになる。人々を別個の「類型」に分類するパーソナリティ理論が,生物学的に妥当とは言えない理由のひとつがこれである。だが,現実に見出される個人差はどういうことなのだろう。身長,パーソナリティ,知能など,これまでに挙げたいくつかの例を見れば,これらが基本的に連続的な次元だということは明らかである。身長には遺伝的な違いがある。それは,遺伝子変異体が成長プログラムを少しだけ速く,あるいは少しだけ長く作動させる(そのシステムの総合的な調整を妨げることなしに)のに,多くの方法があるからだ。そうなると重要な遺伝的な違いの大部分は,すべての人が共有する何らかのシステムの機能もしくは発達に,違いをプラスする変異体から成り立っていることになる。だれもが同じ基本的なボディプランからなる身体を持つ。だが,そのサイズは人によって異なる。だれもが同じネガティブ情動をもっている。だが,その情動が換気される度合は人によって違っている。神経質傾向の強い人の情動は比較的簡単に喚起される。だれもが同じ認知器官をもっている。だが人によってそれは,少しばかりすばやく,あるいは効率的に働く。個々人の違いについて研究する際に,つねに心に留めておく必要があるのはこのことだ——私たちが扱っているのは,一連の共通のメカニズムに沿った連続的な多様体なのである。
ダニエル・ネトル 竹内和世(訳) (2009). パーソナリティを科学する 白揚社 pp.69-70
(Nettle, D. (2007). Personality: What makes you the way you are. Oxford: Oxford University Press.)
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