ここで,ある心乱れる推測が浮かび上がってくる。常日頃から私たちは,現代の巨大な組織——企業,政党,大学等々——がおおむね,サイコパス傾向のある人々にリードされていると感じている。たしかに,もしその地位にたどりつくのに非情さが必要だとしたら,その人たちは私たちがその仕事をやらせたいと思うような人物ではありえない。ありがたいことに,これはたんに統計的傾向であり,いくらかの例外はある。心乱される推測といえば,もうひとる,あまり探られることのないテーマがある。さまざまな文化に共通して見られることだが,女性に対して夫に望むことは何かと聞くと,真っ先に親切さと共感を強調する傾向がある。だが同時に,彼女たちは社会的地位と物質的成功をもかなり高く評価するのだ。両者の間には葛藤がある。親切と共感は高い調和性を意味するが,個人的成功は調和性の低さを意味しがちだからである。女性たちがこの二方向の綱引きをどうやりこなしていけるのか,私にはわからない。だが,これは現実の問題である。あなたに華やかなライフスタイルを与えることのできる人物は,おそらく生活をともにしたいと思うタイプの人物ではないかもしれないのだ。
ダニエル・ネトル 竹内和世(訳) (2009). パーソナリティを科学する 白揚社 pp.191-192
(Nettle, D. (2007). Personality: What makes you the way you are. Oxford: Oxford University Press.)
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