こう考えると,統合失調型だけでなく開放性パーソナリティにおいても何が起きているか,はっきり説明することができる。概念や知覚された対象がいずれも,広範な連想ラフトを活性化するのだとすれば,なぜ異常な信念が生まれるのかも理解できる。実際には「考え」であるものを聴覚と結びつけることによって,幻聴が生まれる。意味のない出来事が,そこにいない人物についての考えと結びつけば,テレパシー,もしくは超常現象という考えにたどりつく。要するに,開放性が低ければ完全に別個のものとして保たれているはずの異なる領域と処理の流れは,ここではついには相互に作用しあい,関連したものとして知覚されるのだ。幻覚,錯覚,超常的信念はいずれも,この連想の広がりが生み出した潜在的にネガティブな効果であるが,同時にそれらは,言語と視覚の分野での創造性にとって強力なエンジンとなる。詩の本質とはまさしく,異なる領域からの意味が結びついた言葉の印象的で隠喩的な使用である。同じことが非言語活動についても言える。ゆるやかな境界をもった連想は,伝統的な知能のように既製の前提から問題解決を見出すだけではなく,まったく新しいものの見方へと飛躍して,新しい果実を生み,あるいは他者の注目を集める。開放性のスコアの高い人が,美術や文学において複雑で複合的な意味をもった表現をおびただしく使い,異端的なステータスを選び,さまざまな追きゅうに駆り立てられるのもここから説明できる。それゆえもし,開放性の心理学的基礎とは何かと問われれば,私はこう答えるだろう——賭けてもいい,それは(低い開放性の心においては別々に保持されている)さまざまな処理ネットワーク間の相互作用の拡大なのだと。
ダニエル・ネトル 竹内和世(訳) (2009). パーソナリティを科学する 白揚社 pp.213-214
(Nettle, D. (2007). Personality: What makes you the way you are. Oxford: Oxford University Press.)
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