僕と同業者のジェス・スターンは1960年に発表した著書『予言——未来をのぞいた人々』で,現代のノストラダムスを発見したと述べている。1930年代から1970年代にかけて数々の予言をしたジーン・ディクソンという女性だ。政治家やセレブの運勢を見ていた彼女はかのウィンストン・チャーチルに,1974年の選挙では労働党に敗れるが,その後で権力の座に返り咲くと告げたことで知られている(実際には,1945年の総選挙で労働党が勝利し,チャーチルは1951年に首相に再び就任した)。ぞっとするのは,ディクソンの予言の多くが事前に公表されたことだ。1956年には,パレード誌でジョン・F・ケネディの暗殺を予言した。より正確に言えば,1960年にアメリカ大統領に選出された民主党の政治家,青い目に茶色の髪をした若くて背の高い男が大統領在任期間中に死亡する,と。彼女は経験なカトリック信者で,自分の力は神から与えられたものだと主張していた。
だが,物事には常にもう1つの面がある。ディクソンは,JFKは大統領選で敗北し,ニクソンが勝つだろうとも予言した。数学者でテンプル大学教授のジョン・アレン・パウロスは彼女にちなんで「ジーン・ディクソン効果」を唱え,数少ない正しい予言ばかりが記憶に残り,外れたものは見過ごされがちなため,予言の的中率は実際より高いと思い込まれると言っている。事実,ディクソンはいくつかの「トンデモ予言」も披露している。彼女によれば,1958年に台湾の金門島と馬祖島をめぐって第三次世界大戦が勃発し,アメリカの労働運動指導者ウォルター・ルーサーが1964年の大統領選に出馬し,人類初の月面着陸はソビエトによって達成されるはずだった。
ウィリアム・リトル 服部真琴(訳) (2010). サイキック・ツーリスト:霊能者・超能力者・占い師のみなさん,未来が見えるって本当ですか? 阪急コミュニケーションズ pp.42-43
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