ヒンドゥー教徒が星を重視するようになったのは数千年前,ヒンドゥー教の全身であるバラモン教の聖典ヴェーダが編纂された時代にさかのぼる。ヴェーダとは,古代の学者が神から直接受け取り,長年にわたって口承で伝えてきたと信じられている教えをまとめたものだ。星の動きが重視されたのは,多くの古代文明の場合と同じく,当時の人々には季節の移り変わりが大きな意味を持ったこと,情報を得るすべが圧倒的に不足するなか,夜空に現れる予兆に従って決断を下そうと考えたことと大いに関係している。
この教えが後にインド占星術に発展した。太陽年の始まりである春分を基準にした黄道12宮を用いる西洋占星術に対し,インド占星術は星座の位置を基準点に固定して12の宮に分割する。言い換えれば,インド占星術は実際の位置を用いて占うが,西洋占星術は太陽が運行する円を12の宮(いわゆる12星座だ)に分けて占うということだ。西洋占星術に出てくる星座の位置はもはや,夜空にある星座の位置とは対応していない。
インドの社会では今でも占星術への信仰が根強い。ビジネス関係者も占星術師の助言を仰ぎ,占星術で将来の出来事を知ろうとする人も多い。
ウィリアム・リトル 服部真琴(訳) (2010). サイキック・ツーリスト:霊能者・超能力者・占い師のみなさん,未来が見えるって本当ですか? 阪急コミュニケーションズ pp.118
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