とくに興味をそそられるのはコールド・リーディングについての記述だ。リチャード・ワイズマン教授は否定的だったが,デレン・ブラウンはコールド・リーディングの力を信じて活用しまくる。著書には,ある番組で「フォアの実験」を再現したときのことが書いてある。1948年に,心理学者のバートラム・フォアが学生を対象に実施した実験に倣い,デレンは20代の若者5人からなる3つのグループ——それぞれイギリス,アメリカ,スペイン出身の若者で構成されている——を相手に「霊視」による性格分析を行った。各グループのうち1人は超能力に対して懐疑的で,残りの4人はどちらかと言えば肯定的だった。デレンは彼らに誕生日を尋ね,手の輪郭を描いたスケッチと身につけるものなどの所有物を渡すよう頼み,その後できわめて詳細な分析結果を書いた紙を渡した。
デレンの「霊視」結果を読んだ後,若者たちはその正確さを100点満点で採点する。彼らのなかで最も懐疑的な意見を持つ若者は40点をつけたが,ある女性はあまりに正確な内容にショックを受け,自分の日記を盗み読みしたとデレンを非難した。個人的すぎる情報が書かれていたため,カメラの前で話すことを拒否した者も2人いた。残りの若者も驚いた。曖昧なことしか書かれていないだろうと予想していたのに,中身はとても具体的で個人的だった。大半が90点台の評価を下し,なかには99点をつけた女性もいた。
採点が終わった後,デレンは結果を書いた紙を回収し,混ぜ合わせてからもう一度配り,どれが誰の結果かわかるかと聞いた。そのとき,若者たちはだまされていたことに気づいた。15枚の紙には,まったく同じ文章が書いてあったのだ。人は誰でも,とりわけアイデンティティが確立していない20代には,同じ悩みや不安を持つ。そうした仮定に基づいて作成された文章だった。
ウィリアム・リトル 服部真琴(訳) (2010). サイキック・ツーリスト:霊能者・超能力者・占い師のみなさん,未来が見えるって本当ですか? 阪急コミュニケーションズ pp.290-291
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