ベーコンは占星術にも関心を向けるようになり,この手の「学問」の「手順」はところどころ鋭い洞察に基づいているが,調査対象である自然効果を再現する戦略に欠けると語った。簡単に言えば「根拠がない限り,こんなナンセンスは信じるな」ということだ。ベーコンが批判に乗り出して以来,占星術は支配層の寵愛を失いはじめた。「占星術は過去のものになったんです」レベッカのこの言葉が事態を適切に説明している。
かつて占星術は宮廷で大きな役割を果たしていた。エリザベス1世は占星術師のジョン・ディーを重用し,結婚相手のバース・チャートを調べさせた——結果は全員「失格」だった——し,ヨーロッパ大陸の王や女王も政治にあたってお抱えの占星術師に助言を求めた。だが1670年までに,イギリスでは占星術師が政治的声明を出して教会や国政に影響を与えることが禁じられた。
それでも,占星術の意義を裏付ける証拠は存在しないとベーコンが暴いたにもかかわらず,庶民の間では占星術の人気はすたれなかった。18世紀や19世紀には,占星術をもとに1年間の日々の運勢や天気予報を記した生活歴(アルマナック)がばか売れした。現代では,占星術はエリート主義的な教会ではなく民間信仰に基づくニューエイジ的宗教といった位置づけになっている。ベーコンが死去してから,かれこれ400年近く。そろそろ,占星術の力は本物か否か,科学的に証明されてもいいはずだ。
ウィリアム・リトル 服部真琴(訳) (2010). サイキック・ツーリスト:霊能者・超能力者・占い師のみなさん,未来が見えるって本当ですか? 阪急コミュニケーションズ pp.333-334
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