霊的な直感とみなされるものの場合も,やはり脳が裏で糸を操っているにすぎないことが研究でわかっている。いわゆる直感とは,精神が第六感で得た情報ではなく,脳がすでに知っていたのに僕たちに教えなかった情報だ。その情報が公開されるのは,僕たちではなく,脳が公開すべきタイミングだと判断したときだけ。人はそうしたほうがいいと感じられるから,予感や直感がするからといって決断を下すことがよくあるが,それは第六感の働きではない。脳が僕たちには意識されないサブリミナルなメッセージを受け取っているのだ。
ポーカーをしているときがいい例だろう。プレイヤーはちょっとした表情やしぐさで手の内を教えてしまうことがある。ちょっぴりとろい僕たちはそれに気づかないが,脳はしっかり気づく。けれど,脳は気づいたことを教える代わりに胃の中がざわざわするような感覚を起こすだけ。その感覚のおかげで相手の手の内を正しく読み解くと,俺の直感力ってすごい,俺はサイキックに違いないなどと本人は考える。だが実際には,鋭敏なのは脳のほうだ。僕たち人間は鋭敏であることを好まない。
ウィリアム・リトル 服部真琴(訳) (2010). サイキック・ツーリスト:霊能者・超能力者・占い師のみなさん,未来が見えるって本当ですか? 阪急コミュニケーションズ pp.381
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