哲学者の世界はともかく科学の世界では,19世紀に科学的唯物論が高まってデカルト流の二元論ははるか彼方に置き去りにされたように見える。唯物論は知的流行として一世を風靡しただけではない。事実上,科学と同義語になった。生物学から宇宙論の分野まで,科学は科学以前の文化で自然現象にあてはめられてきた非物質的な説明を駆逐したとされる。かつて嵐を呼んだ不思議な力は,気圧と温度の組み合わせにすぎなくなった。電気的現象の背後にひそむゴーストは,粒子の運動であることが明らかになった。唯物論的見方によれば,心とは神経の電気化学的作用以上のものではない。コリン・マッギンは言っている。「これは,自然のプロセスが意識のプロセスを引き起こすからではない。自然のプロセスが意識のプロセスそのものだからである。意識のプロセスは自然のプロセスの一面にすぎないからではなく,むしろ意識には神経の相互作用以外のものがないからである」
ジェフリー・M・シュウォーツ 吉田利子(訳) (2004). 心が脳を変える サンマーク出版 pp.39-40
(Schwartz, J. M. (2002). The Mind and The Brain. New York: Harper Collins.)
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