生まれたばかりの視覚システムのニューロンが取り組む課題を考えてみよう。目標は次のような機能的回路をつくり上げることだ。網膜の桿体細胞と錐体細胞からの信号が網膜の介在ニューロンに届き,そこから網膜の神経節細胞に(これが視神経),そこから外側膝状体に達するが,ここで左目からの軸索と右目からの軸索が交差して視交叉をつくる。ここから信号は後頭部の一次視覚野の細胞に送られ,ここで左目からの信号を受け取るニューロンの束は,右目からの信号を受け取るニューロンの束とはべつべつの層をつくる。視覚信号が適切に伝えられるには,目から出た軸索が外側膝状体の正しい場所に達しなければならないし,外側膝状体から出た軸索は聴覚野や感覚野(こっちに先に達する)のシナプスでおしまいにしたいという衝動に抵抗して,はるばると一次視覚野の適切なターゲットまで伸びていかなければならない。しかも網膜で隣り合う細胞は外側膝状体でも隣り合うニューロンに届かなければいけないし,そこから視覚野の隣り合う細胞へと伸びていかなければならない。最終目的は,視覚野で隣り合う数百のニューロンの塊が,赤ちゃんの視野のある小さな部分に反応するニューロンとだけ結合することだからだ。どうすれば,こんなことができるのか?
ジェフリー・M・シュウォーツ 吉田利子(訳) (2004). 心が脳を変える サンマーク出版 pp.121-122
(Schwartz, J. M. (2002). The Mind and The Brain. New York: Harper Collins.)
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