環境からのメッセージに対する脳の反応は,経験によってかたちづくられる。それも神経科学者の大半が思い込んでいるように胎児期および嬰児期の経験だけではなく,生涯にわたる経験によって形成される。言い換えれば,わたしたちがどう人生を生きるかが脳を発達させ,つくりあげる。マーゼニックにとってこの発見の真の意義は,一般に考えられている行動と精神の障害の原因と関係していた。「わたしたちが脳と呼ぶマシンは,生涯修正が続く」と彼は20年近くのちに語った。「それを有効活用するためには,まったく違った考え方が必要だった。脳をパーツも能力も決まっているマシンと考えるのではなく,生涯にわたって変化する能力をもつ器官とみる考え方だ。わたしはこのことが正常な行動と異常な行動の両方に関係すると,口を酸っぱくして説明した。だが聞く耳をもつ人は少なかったし,意味を理解する人はほとんどいなかった」
ジェフリー・M・シュウォーツ 吉田利子(訳) (2004). 心が脳を変える サンマーク出版 pp.190-191
(Schwartz, J. M. (2002). The Mind and The Brain. New York: Harper Collins.)
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