アンダマン海の島々に暮らす原住民たちは,長い間外界から隔絶されてきたが,研究者がこの人びとのミトコンドリアDNAを検査したところ,それはおよそ6万5000年前にアフリカからやってきて居ついた人びとのものと合致していることがわかった。驚くべきことに,アンダマン諸島の原住民は南アジアや東南アジアの人びとには見られない遺伝子マーカーを持っている。現代人の解剖学上の祖先が,アフリカからインド洋の北部沿岸地域に初めて移住してきたのは5万年前から7万年前のことだ。しかし,これらの原住民の遺伝子マーカーが南インドや東南アジアに存在しないということは,彼らが5万年から7万年もの間,隔絶された生活を送っていたことを示している。同じように長い間孤立して暮らしてきたマレーシアの原住民オラン・アスリ(先住民の意)族の調査結果も,アフリカに遡るDNAの痕跡を明らかにしている。
ナヤン・チャンダ 友田錫・滝上広水(訳) (2009). グローバリゼーション:人類5万年のドラマ(上) NTT出版 pp.36
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