それでもコーヒーの飲み方はイスラム式が踏襲された。濃いブラックコーヒーに砂糖だけを入れて飲むやり方だ。砂糖はクリストファー・コロンブスがカリブ海域に持ち込んだものだが,この地域の植民地での砂糖生産は奴隷の導入によってぐんぐん増え,もはや金持ちだけの贅沢品ではなくなっていた。そして乳糖に慣れ親しんでいたヨーロッパ人は,やがてコーヒーに栄養たっぷりミルクを入れる飲み方を編み出した。
コーヒーにミルクを入れる飲み方はまたたく間に評判になり,ウィーンに伝わった。1683年,トルコ軍のウィーン包囲を打ち破ったウィーンっ子たちは,トルコ兵が捨てていったコーヒー豆の袋から大量のコーヒー豆を手に入れて,コーヒーハウスの第1号「青い瓶」(ブルーボトル)を開店した。伝説によると,マルコ・ダヴィアノというイタリア人のカプチン会修道士がミルクと蜂蜜をまぜてコーヒーに入れ,その苦さを薄めることを思いついた。ウィーンっ子たちはこの新しい飲み方を気に入り,こうしたコーヒーの色がカプチン会修道士の僧衣の色柄と似ていることから,カプチン会への経緯の標としてこれを「カプチーノ」と名づけたという。
ナヤン・チャンダ 友田錫・滝上広水(訳) (2009). グローバリゼーション:人類5万年のドラマ(上) NTT出版 pp.175-176
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