習い性と申しましょうか,日本人は自分のことを,「ご近所のブルーカラー」「派遣労働者」だと思い込んでいます。「賃料の安い仕事が得意だったのに,それを周辺の新興国に奪われてジリ貧になっている」と,勝手に自虐の世界にはまり,被害妄想に陥っている。ところが実際は日本は「ご近所の宝石屋」なのです。宝石屋なので,逆にご近所にお金がないと売上が増えません。ご近所が豊かになればなるほど,自分もどんどん儲かる仕組みです。事実この数年,ジリ貧のアメリカ相手の儲けはもう伸びていませんが,ご近所の中・台・韓が成長したおかげで,高い製品もよく売れてたいへん儲けさせていただいた。資源高で潤ったロシアからすら,貿易黒字をいただいているのです。これで他の世界中の途上国もお金持ちになったら,日本はさらにさらに儲かるわけです。
藻谷浩介 (2010). デフレの正体:経済は「人口の波」で動く 角川書店 pp.45-46
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