戦後復興の中で,たまたま数の多い団塊世代が生まれた。彼らが加齢していくのに伴い,そのライフステージに応じてさまざまなものが売れ,そして売れなくなっていく。この単純なストーリーで説明できてしまう,そして予測できてしまうものごとがいかに多いことか。少なくとも「景気循環なるものが永劫回帰のごとく繰り返す」というマクロ経済学の基本形に比べますと,はるかに見事に,「戦後日本」という「国際経済競争市場の特殊解」の消長の理由を説明できます。バブルの発生がなぜ首都圏と大阪圏だけに集中していたのかも,団塊の世代の進学・就職の流れと照らし合わせてみれば完璧に納得してしまう。なぜ当時スキーやテニス合宿,電子ゲームが流行り,その後大きく市場が縮小したのかも,団塊ジュニアが学生だった当時と今を比べればハイティーンの数が4割近くも減っている,ということで説明できる。電子ゲームの市場再拡大は,高齢者にも売れる史上初のゲームである任天堂Wiiの登場まで待たねばならなかったのです。
藻谷浩介 (2010). デフレの正体:経済は「人口の波」で動く 角川書店 pp.126-127
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