女性就労と出生率の話もまったく同じような構造で,「若い女性が働いている県の方が出生率は高い」という事実を,理由はともかく事実として認めないと,日本経済が死んでしまいます。よく誤解されるのですが,「出生率を上げるために女性就労を促進しろ」と言っているのではないですよ。「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです。
そうはいっても皆様腑に落ちていただかないと仕方ないので,「なぜ若い女性の働く都道府県の方が合計特殊出生率が高い」という相関関係が観察できるのか,理由を推測してお話しします。あくまでも推測でして,証明はできませんが,どれかによって少しでも多くの人が「腑に落ちた」という思いになっていただければ幸いです。
推測できる理由の第1は,いまどきダブルインカムでないと,子供を3人持つということはなかなか難しいからということです。普通の家庭の収支バランスを考えれば,皆さん簡単にご実感できることではないでしょうか。なぜ子供3人という話が出るのか。人口水準を維持するには2.1程度の出生率が必要ですが,3人以上産んでくださる人が相当数いない限りは当然出生率は2を超えません。ということで,たまたま子供を生むのに特に向いた体質・性格を持った人がいた場合には,経済的な制約にからめとられることなく3人以上産み育てていただける社会構造にしておく方が望ましく,そのためにはダブルインカムのご家庭を増やすことが近道なわけです。
藻谷浩介 (2010). デフレの正体:経済は「人口の波」で動く 角川書店 pp.233-234
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