そして,世界の中でも日本特有の異常な風習の極めつきが「世襲」だ。何十年も議員をやってようやくリタイアする頃になると,選挙区から支援者まで何から何までを息子や娘に譲り与え,2代,3代と議員を継ぎ,まるで「家業が議員」という形ができあがる。一族全員が何代にもわたって税金で生活しているのだ。
もちろん,アメリカにもブッシュのような二世議員がいるが,海外の二世議員は自分自身で支援者を募り,寄付金を集めなくてはいけないから,日本の二世議員とは内容が違う。あれだけ民主主義でうるさいアメリカの国民が,「世襲だ!」などと文句を言わないのはそのためだ。
ここでひとつお断りしておくが,私は世襲のすべてがいけないとは思っていない。何代も続いた旅館の主人を息子が世襲してもいいし,ラーメン屋の息子が店を継いでもいい。それは単に仕事を受け継いだだけだし,そこから修行もするだろうし,本人の努力がいるからだ。
議員だって「寄付金型議員」で世襲するならばまったく問題がない。どれだけ寄付金を集められるかは本人の努力次第だ。日本の場合は議員が「職業型」であり,単なる「税金の世襲」になってしまっているから問題なのだ。これは断じてあってはならない。
河村たかし (2008). この国は議員にいくら使うのか:高給優遇,特権多数にして「非常勤」の不思議 角川SSコミュニケーションズ pp.35-36
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