いくら国民の方を向いていても議員仲間にとことん嫌われたら,議員をやってはいけない。日本の政治とはそういう世界だ。
気心の知れた議員仲間には,「もう意地を張るのはやめて,宿舎に入ったらどうだ?」と言う者もいるが,そんなことをしたら私の政治生命は終わってしまう。それに今では意地でやっているのではなく,下町ライフを満喫している格好だ。
それでも,そうこうしているうちに事態が変わった。マスコミが,議員宿舎問題をまったく報じなくなっていったのだ。新聞をはじめテレビのワイドショーなど議員宿舎問題を追及していたメディアが,いつの間にかパッタリと報道をやめてしまった。移り気なマスコミの性質が原因かというと,そればかりでもない。これは裏をとった話だが,官邸あたりからマスコミ統制があった。「もういいだろう,そろそろやめてくれ」と各党やマスコミにおふれが回ったのである。
理由は簡単だ。引っ越してくる議員たちにテレビ局がカメラやマイクを向けるので,さすがの議員たちも寄り付けなかったのだ。07年4月からの入居開始時には4割も空室がり,それを無駄と考えたのであろうが,無駄の意味を履き違えている。
このおふれの後,多くの議員が赤坂宿舎に引っ越していった。
当時,私にはテレビ朝日の取材が入っていたが,どういうわけかそれが1週間延期になってそのままボツ。共産党の議員たちが入居したのがその直後だったのでよく覚えている。共産党といえば,「赤旗」で志位(委員長)さんが堂々と議員宿舎への入居はいかんと言っていたのだが……。
河村たかし (2008). この国は議員にいくら使うのか:高給優遇,特権多数にして「非常勤」の不思議 角川SSコミュニケーションズ pp.74-75
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