「絶版制度廃止宣言」構想,あるいは「永久流通宣言」構想
出版社自ら絶版書籍のデジタルデータを販売する。つまり,グーグルがやろうとしているオンラインの「デジタル書籍」販売を出版社自ら展開していくのである。古い書籍なら最初にデジタルスキャンする必要があるものの,デジタルデータの版下が残っている書籍であれば,そのデータを加工・流通するだけで済む。
出版社が最初にすべきことは「宣言」するだけだ。絶版を廃止することで,「著作権者や作品を大事にする出版社」であることを,内外に向けて強くアピールできる。
デジタル書籍であれば,在庫を抱える必要もないし,紙代や印刷代などのコストもかからない。グーグルのような想像を絶する「スキャンミス」も起こりえない。1冊単位の注文にも応じることのできる「オンデマンド出版」への対応も楽々可能だ。まさに「21世紀の新しい出版ビジネス」が,ここに出現するのである。
浮いたコストは,例えば著作権者に支払う印税に振り向けることも可能だろう。そうなれば,著作権者も喜んでこの「構想」に協力すること請け合いである。
さらにこの「構想」は,グーグルの「知的財産征服」の動きを牽制し,独占を防ぐことができるうえに,グーグルとの交渉で主導権を握る材料としても使える。場合によっては,出版社のつくったデジタル書籍の販売にグーグルを利用してやってもいいのである——。
明石昇二郎 (2010). グーグルに異議あり! 集英社 pp.60-61
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