2000年5月に急逝した小渕元首相の資金団体は「未来産業研究会」という。TBSを辞めて父の秘書をしていた小渕優子が,同名の資金団体「未来産業研究会」の届出をしたのは,父の死から半年後の11月。同名でややこしいので以降は,新・旧で記す。
同月,「旧研究会」は,代表者を元首相秘書官の古川俊隆に代え,その日のうちに「解散」の届出をしている。解散時,「旧研究会」の残高は約2億6000万円で,そのすべてを使い切っている。そのうち,寄附支出が約1億6000万円を占めている。寄附の内訳は,7000万円が「国際政治経済研究会」へ,残りの約9000万円が「恵友会」である。これらは,ともに,小渕元首相の政治団体である。
小渕元首相関連の政治団体は「国際政治経済研究会」「恵友会」「恵和会」「恵山会」「平成研究会」などがある。資金団体は1代限りだが,政治団体は永続性があるため,いまなお存在している団体もある。
一方,01年3月に届出のあった「新研究会」の収入は約6000万円。そのうち団体からの寄附によるものが9割を占め,そのほとんどが「国際政治経済研究会」からのものだった(5000万円)。
つまり,父の小渕元首相が「旧研究会」に預けていた「遺産」は,「国際政治経済研究会」を経由して,娘の「新研究会」に相続されたのだ。
もちろんその間,一切税金はかかっていない。つまり,親から娘へ5000万円が非課税で相続されたのだ。だが小渕元首相の死後,寄附した金額は約1億6000万円だったはずだ。となると残りの約1億円はどこにいったのだろうか。
実は,翌年も同様の「相続」が行なわれており,「新研究会」に,「国際政治経済研究会」から2000万円,「恵友会」から5000万円が寄附されていたのだ。要するに,「旧研究会」の解散時に寄附された「国際政治経済研究会」への7000万円と「恵友会」への約9000万円は,2年かけて,それぞれ7000万円全額と,9000万円のうち5000万円が「新研究会」に寄附された計算になるのだ。
上杉隆 (2009). 世襲議員のからくり 文藝春秋 pp.69-70
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