一方で,政治家の側からみても,優良企業のテレビ局に子女を就職させることは,きわめて魅力的だ。自らの後継者育成という点に絞ってみても,バッジをつけた後のマスコミ対策において有利だと考えられている。さらに,記者やアナウンサーなどの出役になれば,本来のマスコミ人脈に加えてさらに顔を売ることができ,選挙に有利だとも考えられている。
そうした理由から,政治とテレビはお互いが「陳情」を認め合うという共存関係が続いている。これはなにも政治家自身の子女に限定される話ではない。政治家の後援会幹部の子弟などでも同様のことがいえる。
それにしても,テレビ局に子女を入れている政治家は年々増加している。そのすべてがコネ入社だというつもりはない。ただ,本来は入社に際して倍率が高いはずのテレビ局が,大量の政治銘柄社員を抱えているのは,確率的にも異常といえはいまいか。
ざっと,思いつくまま挙げてみても,片山虎之助(NHK),松岡利勝(NHK),鈴木宗男(NHK),久間章夫(NHK),高村正彦(NHK),石川要三(NHK),柿沢弘治(NHK),田野瀬良太郎(NHK),上杉光弘(NHK),中川昭一(フジテレビ),中川秀直(テレビ東京),小渕恵三(TBS),小杉隆(TBS),加藤紘一(TBS)らの子女が,テレビ局に就職している。これは思いつくままなので,実際はもっと多いだろうし,親戚や後援会にまで例を広げるとさらに多い。
また,テレビ局にはもうひとつ世襲を批判しにくい事情がある。それは自らも多くの二世社員を抱えているという現実だ。
上杉隆 (2009). 世襲議員のからくり 文藝春秋 pp.168-170
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