脳の構造の個人差を検出する手法として三次元形態解析のひとつであるVBMという解析方法が用いられる。VBM解析では,脳の構造MRI画像から神経細胞が集中している灰白質をコンピュータ上で分離し,灰白質画像をもとに局所的な灰白質の量を計算する。このような解析により,一見どれも同じように見える個々人の脳の構造MRI画像から,灰白質の微細な量の違いを検出することができる。また,個人の局所的灰白質の量を平均的な脳と比較して,どの部位が多くどの部位が少ないかを視覚化することができる。
当然ながら,脳の灰白質の局所量は,性別や年齢などに依存した関係がある。一般的に,男性の方が体も頭部も女性より大きいため,脳の容量も相対的に大きな傾向にある。カトリオーナ・グッドたちの論文では,頭蓋骨内の容量のファクターを差し引いた場合,男性と女性の間で局所的に発達している部位のパターンが異なることを明らかにした。この研究では男性では扁桃体,海馬,嗅内皮質,嗅周皮質が大きく,女性では右の中側頭回,眼窩前頭皮質側部,左の海馬傍皮質,右のヘッシェル回,下前頭回両側,右の側頭平面,右の下頭頂小葉,右の帯状皮質,左の上側頭溝が大きい。このような性別に依存した脳構造のパターンから脳を見て男か女かを予測することも可能だ。
金井良太 (2010). 個性のわかる脳科学 岩波書店 pp.10-11
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