ちょうど70余年の間に,海を越えてやってきたヨーロッパ人が持ち込んだ病気によって,8000万人から1億人の先住民が死亡した。ニーアル・ファーガソンは,白人たちを「中世ヨーロッパで黒死病を媒介したネズミのようだ」と評し,「死の細菌運搬人」と呼んだ。しかしこんな悲喜劇もある。1621年,アメリカのニューイングランド地方,プリマスでは,イギリス人移民たちがある現実を前にして感謝の念を禁じえないでいた。実は,この地の先住民のうち90パーセントが,それ以前の移住者が持ち込んだ病気で死んだのだ。その上,彼らは土地を耕し,冬に備え大量のトウモロコシの種を蒔いておいてくれた。1690年代になってカロライナ総督のジョン・アーチデイルは,「大いなる神の恵みは,インディアンたちの数が減り,イギリス人移民たちに居場所を作ってくれたことだ」と語った。
ナヤン・チャンダ 友田錫・滝上広水(訳) (2009). グローバリゼーション:人類5万年のドラマ(下) NTT出版 pp.89
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