移民が本国に仕送りする金は,途上国側から見れば貴重な歳入だが,人口の海外流出は必ずしもプラス面だけではない。多くの先進国,なかでも移民受け入れに消極的な日本ですら外国人医師,エンジニア,プログラマー,先進国のMBA(経営学修士)取得者の受け入れを促す法律の策定を進めている。知的人材の大量流出はしばしば途上国の景気停滞や低迷をもたらす。サハラ以南のアフリカ諸国では医療サービスは壊滅状態になった。
イギリスの医療サービスの中核はアフリカやアジア出身の医療スタッフが担っているが,ザンビア独立後に養成された12人のザンビア人医師のうち,現在も母国で医療活動に就いているのはたった1人だけだ。推計によれば,イギリス北部の町マンチェスターで働いているマラウィ人の医師は,本国(人口1300万人)の全医師数より多い。
ナヤン・チャンダ 友田錫・滝上広水(訳) (2009). グローバリゼーション:人類5万年のドラマ(下) NTT出版 pp.219
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