2003年,イラクが大量破壊兵器など保有していないことが明白になると,この戦争と,戦争を始めたときにブッシュが掲げた理由を支持してきた人々はイヤというほど不協和を味わうことになった。私たちは大統領を信じた。そして私たち(と大統領)は間違っていた。どうやって不協和を解消しようか。同じようにフセインは大量破壊兵器をもっていると考えていたとしても,野党の民主党にとっては,解決はまだ楽だった。共和党はまた間違ったよ。大統領は嘘をついたか,少なくとも虚偽の情報に耳を傾けた。あんな男を信じたなんて私たちは愚かだった,と言えばいい。しかし共和党にとっては,不協和はもっと激烈なものだった。半数以上は証拠を受けつけないことでこれを解消し,オンライン調査会社のノリッジ・ネットワークス社による調査に対し,兵器は発見されたと思うと答えている。調査担当者は言う。「一部のアメリカ人にとっては,この戦争を支持したいがゆえに,大量破壊兵器は発見されなかったという情報は頭からはじきだされてしまったのでしょう。あれだけニュースで流され,国民も注目したのに,こんなにも間違った情報が広まっているところをみると,彼らは認知的不協和を味わいたくなかったようです。」正解,である。
キャロル・タヴリス&エリオット・アロンソン 戸根由紀恵(訳) (2009). なぜあの人はあやまちを認めないのか:言い訳と自己正当化の心理学 河出書房新社 pp.30
(Tavris, C. & Aronson, E. (2007). Mistakes Were Made (but not by me): Why We Justify Foolish Beliefs, Bad Decisions, and Hurtful Acts. Boston: Houghton Mifflin Harcourt.)
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