精神分析では,感情の解放による魂の浄化すなわちカタルシスは精神衛生上よろしいものだとされていて,八つ当たり人形でよくわかるように,私たちの文化ではひとつの根強い思いこみが生まれた。腹が立ったときは,どなったり暴れたりして発散すると怒りがおさまるという思いこみだ。この人形を投げつけたり,サンドバックを殴ったり,妻をどなりつけたりすれば気分がすっきりするという。しかし現実には,何十年もの研究の成果からまったく逆の結果が出ている。攻撃的な方法で怒りを発散させると,かえって気分は落ちこみ,血圧は上がり,ますます腹が立つのである。
キャロル・タヴリス&エリオット・アロンソン 戸根由紀恵(訳) (2009). なぜあの人はあやまちを認めないのか:言い訳と自己正当化の心理学 河出書房新社 pp.39
(Tavris, C. & Aronson, E. (2007). Mistakes Were Made (but not by me): Why We Justify Foolish Beliefs, Bad Decisions, and Hurtful Acts. Boston: Houghton Mifflin Harcourt.)
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