無実の人間に自白させてしまうのは,警察の取調べ中のミスとしては最大級に危険なものだが,刑事も検察側も判事も大半はこうした事態など起きるはずがないと思っている。「してもいないことを白状させられるなんて馬鹿げた考え方だ」と,あのジョシュア・マーキスも言う。「まさに(現代の)トゥインキー的意見[トゥインキーは,究極のジャンクフードと見なされている金色のスポンジケーキで,何年も腐らないという都市伝説がある]であり,最低のゴミ科学だ」。たいていの者は同意見だろう。無実なのに罪を告白するなど想像もつかない。断固,抗議する。絶対に主張を曲げない。弁護士を呼ぶ……はずだろう?しかし,まったくの無実と判明して釈放された収監者を研究した結果,15パーセントから25パーセントは実行してもいない犯行を自供していた。社会科学者や犯罪学者はこうした事例を分析し,実験によってメカニズムを解明しようとした。
キャロル・タヴリス&エリオット・アロンソン 戸根由紀恵(訳) (2009). なぜあの人はあやまちを認めないのか:言い訳と自己正当化の心理学 河出書房新社 pp.185-186
(Tavris, C. & Aronson, E. (2007). Mistakes Were Made (but not by me): Why We Justify Foolish Beliefs, Bad Decisions, and Hurtful Acts. Boston: Houghton Mifflin Harcourt.)
PR