基礎から専門分野へ,また,科学に基づいた応用を用いる職業へというふうに心理学が大きく展開しているわけですが,これによってある人たちは,もう基礎研究というのはあまり必要がないのだといいます。そしていくつかのスキルとテクニックを実践者として身に付ければよいのだという人もいます。しかし,そうして科学的な根拠がだんだんと失われていくなかで,いろいろなリスクが生まれてきます。新しい職業としてのサイコロジスト,これは専門技術と心理的介入法を教育訓練されているわけですが,その土台となっている科学の基礎,基本がわからずやっている人がだんだんと増えてきました。
さらに悪いことに,このように非常に狭い範囲での訓練しか受けていないサイコロジストは新しい現象が出てきたとき,また,それに関する新しい科学が出てきたときに,それに対処することができなくなっています。こうしたことが,学部教育より上の,実践・応用サイコロジストの専門教育において議論されていることです。
J.ブルース・オーバーマイヤー 今田寛 (2007). 心理学の大学・大学院教育はいかにあるべきか 関西学院大学出版会 pp.19-20
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