これに関連する問題ですが,博士学位を取得するにあたってのコースワークの占めるウェイトと研究う・論文の占めるウェイトに,両国にかなりの違いがあるように思います。今日のアメリカの場合,Ph.D.の取得にあたってリサーチと論文の占める割合は,オーバーマイヤー氏からの私信によりますと,実験系で約50%,臨床系で20〜25%であろうということです。残りがコースワークの比重ですから,これがかなり高いことが分かります。しかしわが国の場合,伝統的に博士論文というものはその人の研究の集大成なので膨大なものでなければならないという考えが強く,その影響は,アメリカ型の課程博士と大学院制度になった今日にも多少残っているのではないでしょうか。それと,上記のようにコースワークの充実度が低い分だけ,わが国では博士学位取得に占めるリサーチと論文の割合を80〜90%程度に見る人が多いのではないかと思います。
J.ブルース・オーバーマイヤー 今田寛 (2007). 心理学の大学・大学院教育はいかにあるべきか 関西学院大学出版会 pp.43
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