食物の物理的状態が重要なのは,食べるものの本当のカロリー値がわからないせいで,食物とその加工技術が肥満増加につながるような方向に変わりつつあるからだ。スーパーマーケットに行けばわかるが,小麦粉はますます微粒になり,あらゆる食品が柔らかくなり,カロリー濃度が増している。固いパンは<トゥインキー>(訳注——クリームの入ったスポンジケーキ)に,リンゴはリンゴジュースに取って代わられた。消費者は現在の食品表示ラベルシステムによって,加工方法に関係なく,同じ重さの栄養素から同じカロリーが得られると信じこまされている。ヘビが挽肉からより多くのエネルギーを得,ラットが柔らかくしたペレットを食べて太るのであれば,ヒトが同じような食物を選んで別の結果を得るとは考えにくい。食物の固さが健康に与える影響を調べた研究はこれまでたったひとつしかない。それによると,より柔らかい食物を食べる日本女性は,腰まわりがより太かった。腰まわりの太さは死亡率の高さに関連している。これは予備調査だった。結果に一貫性があることを証明するのには時間がかかるが,意味するところは明らかだ。すなわち,私たちは消化されやすいものを食べることによって太る。知っておかなければならないのは,カロリーだけではない。
リチャード・ランガム 依田卓巳(訳) (2010). 火の賜物:ヒトは料理で進化した NTT出版 pp.203-204
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