コロンビア大学のうちの学部では,世界中の入学志願者の中から,毎年6名の大学院生を受け入れている。みんな驚くほど試験の点数が高く,成績はほぼ完璧で,有名教授のべたぼめの推薦状を携えてやってくる。他の一流校からの誘いも受けていたりする秀才ぞろいである。
ところがたった1日で,自分を別人のように感じはじめる学生がいる。昨日まで自信満々の優等生が,今日はみじめな劣等生。いったいどうしたというのだろう。教授たちの長い出版物リストを見ては「うわあ,自分にはとてもそんなことはできない」。学会で発表する論文を提出したり,助成金申請のための研究計画案を作成している上級生を見ては「うわあ,自分にはとても無理」。試験の点数やA評価の取り方は知っていても,どうすればこんなことができるのかはまだ知らない。学生たちはこの「まだ」という点を忘れているのである。
キャロル・S・ドゥエック 今西康子(訳) (2008). 「やればできる!」の研究:能力を開花させるマインドセットの力 草思社 pp.43
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