どの学生もよく勉強したが,勉強方法に違いがみられた。大多数の学生がやっているのは,まず教科書と授業ノートを読んで,わかりにくければもう一度読み返し,掃除機さながらに片っ端から丸暗記していく方法である。こちこちマインドセットの学生の勉強法はまさにこれだった。それで良い点が取れないと,化学は苦手だと思いこんでしまう。「やれることはすべてやったんだから」と。
とんでもない。しなやかマインドセットの学生の勉強法を知ったらびっくりするのではないか。私ですら驚いたのだから。
しなやかマインドセットの学生は,学習意欲をかきたてる方法を自分で工夫していた。やみくもに丸暗記するのではなく「講義全体のテーマや基本原則をつかむ」努力をし,「ミスしやすいところでは完全にマスターできるまで反復練習」した。試験で良い点を取ることにではなく,しっかりと理解することに目標を置いていた。じつは,これこそが良い成績をとれた理由なのであって,もともと頭が良かったわけでも,予備知識が豊富だったわけでもない。
キャロル・S・ドゥエック 今西康子(訳) (2008). 「やればできる!」の研究:能力を開花させるマインドセットの力 草思社 pp.92-93
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