この疑問に答えるべく,思春期初期の子どもたち数百人を対象に実験を行なった。まず生徒全員に,非言語式知能検査のかなり難しい問題を10題やらせた。ほとんどの生徒がまずまずの成績。終わった後でほめ言葉をかけた。
ほめるにあたっては生徒を2つのグループに分け,一方のグループではその子の能力をほめた。「まあ,8問正解よ。よくできたわ。頭がいいのね」といったぐあい。そう言われた子どもたちは,アダム・ゲッテルと同じく,有能というレッテルを貼られたことになる。
もう一方のグループでは,その子の努力をほめた。「まあ,8問正解よ。よくできたわ。頑張ったのね」といったぐあい。自分には何かすぐれた才能があると思わせないように,問題を解く努力をしたことだけをほめるようにした。
グループ分けをした時点では,両グループの間に差が出はじめた。懸念されたとおり,能力をほめられた生徒たち(<能力群>と呼ぶことにする)はたちまち,こちこちマインドセットの行動を示すようになったのだ。次に取り組む問題を選ばせると,新しい問題にチャレンジするのを避けて,せっかくの学べるチャンスを逃してしまった。ボロを出して自分の能力が疑われるかもしれないことは,いっさいやりたがらなくなったのである。
努力をほめられた生徒たち(<努力群>とよぶことにする)は,その9割が,新しい問題にチャレンジする方を選び,学べるチャンスを逃さなかった。
キャロル・S・ドゥエック 今西康子(訳) (2008). 「やればできる!」の研究:能力を開花させるマインドセットの力 草思社 pp.103-104
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