自動車を運転するとき,なにが起こるのだろうか?たしかに多くの時間を運転につぎこんでいるが,それは知識の獲得につながっているだろうか?懸命に上達しようと努めているわけでもない。それどころか,ほかのことを考えている。夕食はなんにしようか考えたり,同乗者には話しかけたり,ラジオを聴きながらハンドルにかけた指でリズムをとったりしている。実質的には自動操縦で運転しているのだ。
極端な例のように聞こえるかもしれないが,これは驚くほど多くの人びとに当てはまる(これほどひどくないにせよ,ちがいはほんのわずかだ)。仕事をこなしていても——いくぶん,あるいはすっかり——うわの空になっていることがしばしばある。かたちだけやっているのだ。だから(多数の研究が示すように)多くの活動では,かけた時間の長さと腕前の関係がごく弱くなっている。深い集中をともなわなければ,ただの経験はすぐれた技量に変わらないのだ。
マシュー・サイド 山形浩生・守岡桜(訳) (2010). 非才!:あなたの子どもを勝者にする成功の科学 柏書房 pp.87
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