おそらく,もっともたちの悪い問題は,こうしたステレオタイプが自己成就的な性格をもつことだろう。もし黒人たちが,教育面で成功しても雇用主がそれを無視することを見て取れば,彼らは(まったく合理的に)ほかの面に努力を向けようと決断するだろうから,黒人の教育水準はさらに下がる。するとやがて,雇用主たちの暗黙の想定(黒人は白人より知的な資質が劣る)は永続的に厳しい現実として反映されてしまうことになる。
スポーツとなると,人種的偏見の方向が逆転する。そこでは主流の偏見が黒人に有利に働き,白人を排除するようになる。白人は(とくに強さやスピードが関係するスポーツでは)天性がないという偏見のせいで見すごされがちになる。いっぽう,黒人は天性の才があると思われるのでスポーツにはげむようあと押しを受け,さらに練習をしてもっと成績を挙げ,結果としてもとの思いこみを自己成就させることになる。
マシュー・サイド 山形浩生・守岡桜(訳) (2010). 非才!:あなたの子どもを勝者にする成功の科学 柏書房 pp.305-306
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