サイコメトリーという言葉は,1842年にギリシャ語のpsche(魂)とmetron (測定)からつくられた造語である。だが,その概念自体は,はるか昔からさまざまな文化のなかで民話として育まれてきた。何世代にもわたる幽霊話も,元をたどれば,建物は殺人の記憶をとどめられる,恐怖は長年その場所に宿る,と信じられていることからくる。
たいていの学者は,サイコメトリーなど迷信と同じで議論に値しないと見なしてきた。ところが30年ほど前,ボストンの地質学者が,多少の心霊能力があるという妻とその友人数人を,サイコメトリーの実験にかけてみることにした。実験の方法はきわめて単純で,彼がもっともよく知っているものを使った。岩石を紙に包んでおいて,その中身について話すよう求めたのである。
ハワイのキラウエア火山の溶岩のかけらは,こんな反応を引き出した。「火の海が崖からなだれ落ちているように見える」氷河擦痕のある石灰岩の小石はこうである。「わたしはどんどん流されていて,上にもまわりにも何かある。きっと水だ。わたしは氷漬けになっている」
批判者らが指摘するように,実験に用いられた岩石は,被験者が紙の上からさわってみたときに推察できたかもしれない。それに,たとえサイコメトリーというものがあるとしても,無生物がどのようにして人間と交信できるのかは,誰も説明できなかった。
デボラ・ブラム 鈴木 恵(訳) (2010). 幽霊を捕まえようとした科学者たち 文藝春秋 pp.163-164
PR