アメリカの科学者たちもまた,心霊主義者の主張をひとつひとつ突き崩してきた。たとえば,霊感のある人間は磁気信号を検知するなみはずれた能力を力の源にしている,というよく知られた説もそのひとつである。
調査にあたったのは,ウィスコンシン大学のジョーゼフ・ジャストロウだった。ジャストロウは簡単な実証から始めた。まずダイナモを使って大型の磁石を帯電させ,磁場を発生させる。それから,隣の部屋に座った自称霊能者に,いつ磁場が強くなり,いつ弱くなったかを言わせる。
最初の実験では驚くほど明確な相関関係が表れ,本当に磁波を“感じ”られる被験者もいるのだろうか,とジャストロウは不安になった。
だが,しだいに別の可能性に気づきはじめた。彼自身も,ときおりダイナモのうなりと,磁場が消える際の小さなカチッという音を耳にしたのである。そこで,ダイナモと磁石を遮音材でおおってから,何度も実験を繰り返した。ヘンリー・シジウィックばりのねばり強さを見せたのである。
遮音した磁石と10人の霊媒を使って行なわれた1950回の実験では,すべて否定的な結果が出た。ジャストロウはこう書く。「われわれが実験したかぎりでは,磁場に対する感受性はいっさい明らかにならなかったと結論する」
これら職業霊媒はなんら特別な才能を持っておらず,最悪の場合は嘘つきの詐欺師であり,最良の場合でも,自己欺瞞を引き起こす心の病の犠牲者である。それが彼の結論だった。
デボラ・ブラム 鈴木 恵(訳) (2010). 幽霊を捕まえようとした科学者たち 文藝春秋 pp.185-186
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